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少しだけ、逃げながら。

 元々あったホームページをリニュアールしてみた。

なるべく更新できればと思っている。誰に見られるかも、誰に見せたいのかもわからないブログを書きながら。見て欲しいようで、見て欲しくないような、見せるには適していないデザインにしてみたりして。

いまだに遊び心を言い訳に、少しだけ逃げている。


 2017年に珠洲に移住してから、あまり作品を作ったり、美術的な活動をしてこなかった。

元々していたのかというのも怪しいが、美術から逃げてきた。

というのも、漠然と「現代美術」に対する疑念や違和感、「現代美術ってなんだろう」「現代美術も資本主義の論理じゃないか」「そもそも自分に美術は必要なのか」「美術じゃなきゃいけないのだろうか」などの思いが日毎に沈殿していき、逃げ出すように珠洲市に移住してきたからでもある。

その沈殿物は、2015年に大学を卒業した後、フリーターをしながら制作活動をしていた時に、貧乏と疲労からなる社会への鬱憤と絶望、自身の芸術性への失望、圧倒的な社会性の無さの痛感、

そんな苦しみを忘却するために酩酊する毎日の中で、人生ではじめてタバコを吸い始めた結果、肺に堆積した

ヤニのようなものだ。


小さい頃に両親が離婚し、1人で育ててくれた放任主義の母の唯一の教えは「タバコと浮気とギャンブルだけはやめなさい」。

その一つを遂に破ってしまった、自身への悲しみの重さでもある。


 そんな淵で札幌国際芸術祭の関連イベントでもあるアーティストインレジデンスに採択されたことで、2週間北海道に滞在することとなる。そこでの島袋道弘さんとの出会いが自分を変える。

最先端で活躍するアーティストの日常生活の話しを聞いたり、作品や美術への軽やかな向き合い方を聞いたりで、自分の目指す目標?までいうとおこがましいが、その姿勢の保ち方に強い憧れを覚えた。

そのプロジェクト内で離婚した父親と再会し、20年振りに話すことで、自分の人生について、ちゃんと考えるようになった。

プログラムの終わりに島袋さんからもらった言葉、「ちゃんと生きる」を実践するため、美術を離れ「人間としての生活」を一度「ちゃんと」してみようと思い、珠洲へと移住することにした。

ちょうど、「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマが放送されていた気がする。


 2022年現在、30歳を迎え、少しだけ「ちゃんと生きれる」ようになってきた。極々一般的な社会性を獲得し、この後の人生を想像した時、

5年間遠ざけていたものに、自然と触れたくなり、その深度を探りたいという欲求に駆り立てられている。

自分にとっての、社会にとっての、コミュニティにとっての、「美術」の必要性を、今では「ちゃんと」感じている。


詳細は追々にして、

制作活動へのウェイトを重くし、アーティスト活動としての意識を芽生させたいと思い、ホームページの更新を始めようという思に至る。それは「作品制作を定期的にせよ」という自身へのメッセージでもある。

思いついていたけど取り入れてこなかった「shing keng」というアーティストネームに逃げながら。


おわり

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